世界を熱狂させた海外ドラマ「ゲームオブスローンズ」の登場人物から学べる西洋哲学

ネタバレ注意!

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1年前から僕はゲームオブスローンズにはまっている。それぞれの登場人物の設定もしっかりと作り上げられているし、次に何が起こるか分からないシナリオもすばらしい。感情移入できるキャラクターも多く(大抵はあっさり死んでいくが)、長く見続けられる作品だと思っている。

このドラマには政治、モラル、愛、欲望など、様々なテーマが詰め込まれていてそこから生まれるジレンマがストーリーを魅力的にしているのだと思う。

そこで今回は、哲学的な視点からゲームオブスローンズのキャラクターの行動を考察していきたいと思う。

 

エダード・スターク

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シーズン1の大半はエダードのストーリーに集中していた。

モラルを問われるような場面でこのキャラクターはドイツの哲学者カントの道徳観に当てはまる選択をする。

カントにとって行動の道徳的価値はその行動の結果ではなく、動機や意欲によって決まる。すなわち結果が自分にとって損だったとしても、義務に答えようとする動機があればその行動は十分に正しいものとなるという事である。

 

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例えば、シーズン1でロバート国王がデナーリスの暗殺を命じる時、エダードは反対する。何故なら、彼にとって無罪の少女を殺害するのは正当では無いからだ。例え、その選択の結果が自分にとって危険であったとしてもエダードにとって動機は結果よりも大切なのだ。

 

実際彼がシーズン1で死んでしまうのは、この考え方を変えられなかったからだ。ゲームオブスローンズの世界では自分のいる環境に早く適応できない人物は勝てない。義務、伝統、正義感がまだ人々の思考に根強く残っている北から、自分の権力しか頭にない人々ばかりのキングズ・ランディングにやってきた彼はその環境に適応出来なかった。自分の考え方をそのまま押し通して相手に隙を与えてしまった為に殺されたのだ。

 

 

タイウィン・ラニスター

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タイウィン・ラニスターの政治のやり方は少し過激な気がしなくもないが、彼の行動はある政治思想家の考えと似ているところがある。その思想家の名前はニッコロ・マキャヴェッリだ。彼が生きた時代のイタリア半島は政治的に不安定で戦争、陰謀は日常茶飯事だった。そんな時代に生きた彼の政治観ははっきりしている。

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王子が権力を手にしたい、保持したい場合に必要な素質とは何か?

民衆に愛される事、広い心を持つ事、あるいは約束を守る事?

マキャヴェッリにとってその質問に対する答えはいたってシンプルだ。

「愛される君主になるよりも、恐れられる君主になるべき」である。

彼にとって長く君臨できる君主はウソをつく事が出来る上に、ケチである。

これだけ聞けば今の平和な時代に生きる自分たちにとってひどい話だが、政治的に不安定な状況ではいかにリーダーシップを発揮出来るかが大切なのだ。どんなに優しく、愛されていても国民を守る事の出来ない君主は何の役にもたたない。

 

この考えはイングランド哲学者ホッブズの教えにも当てはまる。「人間は人間にとっての狼である」と書いたのは彼だが、ホッブズにとって国家権力は「力」を求める人間達を一つに統制し、社会平和を維持するのに不可欠だと言う。個人の自由を諦め人は安全を求める。

タイウィンはそれぞれの自由と引き換えに民衆の安全を確保している。道徳を捨て彼が求めたものは安定した国づくりだったのだ。 

 

終わりに

ゲームオブスローンズの世界では正義やモラルという概念は存在しない。それぞれのキャラクターが自分の世界観、哲学を持っているからこそこの作品は奥が深く、魅力的なのだと思う。他にも色々なキャラクターの行動に哲学的思想を当てはめたかったが2人のキャラクターだけでだいぶ時間をとられてしまった。この記事から学べる物があったら是非友人と共有してほしい。好きなドラマを見ながら物事を学べる程すばらしい事は無いと思うからだ。

 

iieiga.hateblo.jp